TO | 着付け師・岸本浩加さん | Vol.2 | 心を豊かにする着物
About “TO”
HIDETO SATO DESIGNがデザインやブランディング、コンサルティングに携わっているクライアントや、クリエイティブのチームとして共にしているパートナーへインタビューをする企画です。
Text & Photo: Sayoko Hirai | HIDETO SATO DESIGN |
第1回目の“TO”のお相手は、岸本浩加さん。Vol.1では、岸本さんと佐藤の出会いについてお聞きしました。柔らかな光が差し込む部屋で、二人の和やかな会話が続きます。Vol.2では、岸本さんが着物をする理由についてご紹介していきます。
Vol.2
心を豊かにする着物
岸本:着物を着ることで、季節や自然を感じる暮らしになるんです。着物にはお花が描かれているし、季節によって袷(あわせ)や、単衣(ひとえ)、夏の着物を着なきゃいけない。あと、おめでたいときには吉祥文様のものを着ようとか。そういう感性がおのずと磨かれていくものが着物なの。
佐藤:ほほぉ。
岸本:感性を磨くと何がいいかって、心が豊かになるんじゃないかしら。
佐藤:あぁ!
岸本:心の豊かさって、要は感性が磨かれることなんだろうなって最近気づいたの。
佐藤:それ、すごく素敵ですね。感性が磨かれると心が豊かになる。心を豊かにするために感性を磨く。
岸本:私が着物をする理由は、そこにあるんだと思う。お稽古ごとは色々したけど、着物をすることで生活がガラッと変わったんですよ。着物に出会ったのが26歳のときで、そこからお花を好きになるし、日本の文化にもどんどんハマっていくし。着物をきっかけに色々なことが一気に広がりました。
佐藤:着物がその入口になったってことですね。
岸本:感性が磨かれるから楽しかったんでしょうね。
佐藤:磨かれるからこそ、さらに広がりが出て、という感じですか?
岸本:そう。感性を磨くって、やろうと思えば日々の中でいくらでもできるでしょう?そういうアンテナが張るようになったのは着物をはじめてからかな。
佐藤:おもしろいです。ということは、人と「つながる」とか“おもいを受け継ぐ”っていうのは、感性のさらに上の概念なんでしょうね。
岸本:着物を知ることでこんなに人生が楽しくなったから、皆さんにも経験してほしいって思ったの。それは本当の幸せとか豊かさだと思うから。
佐藤:なるほど。
岸本:最近ね、なんでキシモトヒロカジムショをやるんだろうって考えて、着物との共通点を探したの。そうしたらやっぱり、私は「人」なんだなって。人の幸せとか豊かさとか。私はそういったものにつながりたい。そこには受け継いできたものや、親への感謝があるの。
佐藤:うんうん。
岸本:キシモトヒロカジムショでは自分の経験をもとにして、感性を伝えていく感じかな。
佐藤:「そもそも」をつくっていく感じですね。
岸本:もの、人、建物、食。何でもいいんだけど、そこから感性や豊かさを発信していきたい。結局、人の幸せとか豊かさにつながったのよね。
佐藤:そう思うとやっぱり、浩加さんにとって着物は大切ですね。この前お話したときには、着物との現在の向き合い方について仰っていましたが、必要なものだからこそ継続されているんですね。
岸本:そう、「キシモトヒロカジムショに集中したほうがいいかもしれない」と思った途端に着付けの仕事がきたりしたのよ。それも立て続けに(笑)
佐藤:しっかりと継続していって、というお達しなんでしょうね(笑)大きいベクトルは同じでも、やるべきことが違うんですね。
岸本:全然違う!着物は私自身の経験がもとなんだけど、キシモトヒロカジムショはどんどん新しいことが展開していく。自分が未経験のことができるから、わくわくするの。
佐藤:なるほど。
岸本:おもしろいよね。感性を通して、ものやことをつくっていけるわけだから。
佐藤:今回お聞きしていて「感性」は、新しいキーワードですね。
岸本:これからの時代、AIがどんどん出てくるけど、AIに感性ってやっぱり難しいと思うの。だからこそ、感性を磨く時代になっていくんじゃないかな。
佐藤:人間だからこそってことですよね。
佐藤:浩加さんのゴールというか、目標はなんですか?感性を磨くことですか?
岸本:感性を磨くことは、やっぱり豊かさとか幸せ感につながるんですよ。でも、それらは目に見えないじゃない?それでも伝わるものだから、それぞれが幸せで豊かな気持ちを持てば、大きなエネルギーになると思うんです。
佐藤:うーん、なるほど。
岸本:それで、そういう人たちが増えたら、争いごとがなくなって世界が平和になると思うの。そういう感性で生きている人たちは、自然も大切にするはず。だから、自然を大切に、地球に優しい生活スタイルになって、地球が美しくなる。そうやって、人が美しくなることで自然も、地球も美しくなるの。すべて感性が流れをつくっていくと思うんです。
佐藤:では、感性から派生して「美しい」というキーワードはいかがですか?
岸本:ううーん…美しさっていうのは、すっごく難しくて…。
佐藤:難しいですよね。
岸本:ただ、私が美しいって思うのはやっぱり「心のあり方」なのかな。目に見えて美しいものでも、例えばそのつくり手さんが美しくない心でつくってると美しく見えなかったり…「美しい」ってなんだろうっていつも考えながら生活してます。
佐藤:では、美しくなると、どうなっていくと思われますか?
岸本:うーん、なんだろうね。でもそれって感性とか豊かさとか幸せとかに全部つながっちゃうから。
佐藤:あぁ!浩加さんにとっては「美しい」も心の豊かさにつながるんですね。
岸本:そうそう。
佐藤:では「感性」と「美しい」はかなり近い意味合いなんですね。感性を磨くことで美しいものが増えていって、それが心の豊かさに広がっていく。
岸本:美しいものを見れば、心も豊かになるし。
佐藤:たしかに!
岸本:なんかね、ここ数日で、ぽんぽんぽん!って自分の考えがまとまっていったの。佐藤さんとお話した後から一気に(笑)
佐藤:コメダ珈琲でお話したときから?(笑)
岸本:そうそう!
次回は、岸本さんとデザインの関係性についてご紹介します。そこには、“感性”に加え、“信頼”が大切な要素としてあるようです。
岸本浩加 | 着付け師・小笠原流礼法講師 岡山市倉敷市
https://hirokakishimoto.jp
着物の念いを受け継ぐ
https://hidetosato.com/archives/2231