TO | 着付け師・岸本浩加さん | Vol.3 | “岸本浩加”をデザインする
About “TO”
HIDETO SATO DESIGNがデザインやブランディング、コンサルティングに携わっているクライアントや、クリエイティブのチームとして共にしているパートナーへインタビューをする企画です。
Text & Photo: Sayoko Hirai | HIDETO SATO DESIGN |
第1回目の“TO”のお相手は、岸本浩加さん。着物をはじめとする日本文化や日頃の生活を通して、「心の豊かさ」を意識されているそうです。
Vol.3は、目に見えない「心」を見えるものとして表現する「デザイン」についてのお話です。
Vol.3
“岸本浩加”をデザインする
佐藤:浩加さんは民藝にも興味を持たれてますよね。着物以外で伝えていきたいとか、もっと知りたいと思う日本文化はなんですか?
岸本:茶道!あとお花もそう。遠いものよりも、近いもの。生活が身近に豊かになるものに興味があるかな。
佐藤:だから民藝なんですね。
岸本:お茶やお花って、毎日取り入れようと思えば取り入れられるから。あと、書とかね。なんでもいいから一つでも取り入れれば、日本文化を知る入口になると思う。
佐藤:民藝も、もっと探求していきたいと思ってらっしゃるんですか?
岸本:民藝は哲学も入ってるから。ほんとに心の豊かさに繋がるの。
佐藤:あぁ、そこもまた繋がっていくんですね。
岸本: 民藝思想の「用の美」が、使うための美しいものっていうのは、いつも感じます。使ってて飽きないし、常に変化していくの。器が変化していくって言ったら不思議なんだけど。本当に自分の心が映るんです。
佐藤:ほぉ。
岸本:同じコーヒーカップを見ても、夕暮れ時は異様に哀愁を感じたり、朝はほっこりしていて、今日も一日頑張ろうって気持ちになったり。ときや時代によって、見え方が違うっていうのは、強く感じるところかな。
佐藤:そういう変化にちゃんと気づけて、美しいなって思えるのが・・・
岸本・佐藤:感性!
岸本:それに気づけるって、すごく豊かなんじゃないですか、心が。
佐藤:たしかに。日常の中で「美しいな」って思えることは、心の余裕なのかもしれないですね。
岸本:そういう感性っていうのが、これからは必要なんじゃないかな。
佐藤:なぜこれからは必要なんですか?先程、AIの話もありましたが。
岸本:うーん…日本人の感性って、どの国よりも一番優れてると思うんだけど、そういう感性を持った人が少なくなってきてるんじゃないかな。
佐藤:時代ですか?
岸本:うん、でも日本文化に触れてる人に少なくなってきているから、仕方のないことなのよね。
佐藤:だから能動的に磨いていかなきゃいけないんですね。
岸本:昔はお母さんが自宅でお花を生けたり、書を書いたりする時間を持ってたんです。でも、今はそういうのが少なくなってきて、時間だけをカットして心が置き去りになってるケースも多い気がする。科学技術が発展して、どんどん便利にはなってるんだけど、心が追いついてない感じがする。
佐藤:いやぁ、今日のテーマは「心」ですね。浩加さんっぽいです。
岸本:今、なぜ民藝かっていうのは、そこなんだと思う。
佐藤:そうか。「暮らし」と「心」というのは一緒のことなんですね。おもしろいです。
佐藤:今回、着物物教室とキシモトヒロカジムショ、2つの存在理由がお聞きできて、すごく納得しました。どちらも感性を磨くことなんですね。感性を磨くと美しくなって、美しくなると心が豊かになるってことですよね。
岸本:うんうん!
佐藤:それを実現したり伝えたりするためにデザインっていうものを、選んでいただいたと思うんですが、偶然の出会いの中で、なぜうちの事務所にご依頼くださったんですか?
岸本:大好きな人が「佐藤さんはすごい人!」って言ってたから!
佐藤:わぁ…ありがとうございます!
岸本:ふふっ。もう、そこで選びました!要は信頼なのよ。
佐藤:なるほど。じゃあご縁の繋がりなんですね。
岸本:私は人とのご縁がいいねってよく言われるんだけど、それは周りに信頼できる人しかいないから。
佐藤:信頼する方の言葉がきっかけで、お仕事を任せてくださったんですね。
岸本:そう。大好きな、ほんとに大好きな人が「彼はすごいんですよ、若いけどこれからもどんどん活躍する人ですよ」って。
佐藤:ありがとうございます。
岸本:それを素直に信じるので(笑)信頼関係ができてる人との繋がりは、もう絶対に信頼関係が生まれるの。
佐藤:すぐうちの事務所にいらっしゃいましたもんね(笑)
岸本:それもひらめきなのよ!
佐藤:それから実際にロゴをつくったり、ウェブをつくったり、コピーをつくったりしましたね。そういったブランディングデザインの前後の変化はどうでしたか?
岸本:もう全然違う!つくることによって、まず「覚悟」ができました。私の「仕事」としてやっていくんだって、覚悟ができたのが大きいかな。デザインって、“わたし”だと思うの。
佐藤:たしかに、そうですよね。
岸本: “わたし”のデザインを見て、「この人の着物教室なら行ってみたいな」って思ってもらえるとかね。特にロゴをつくってもらったのは大きかった。周りからも「あのロゴすごくいいね」とか「すごく浩加ちゃんっぽいね」とか言ってもらって。それがあることで認知度も上がっていったし、自分自身、どんどん発信したくなります。
佐藤:「発信したくなる」ですか!
岸本:今までは控えめに、なんとか生徒さんが来てくれればって感覚だったけど、そこからは自信がつきました。
佐藤:嬉しいです(照)僕はブランディングを、“約束”からの“信頼”だと思っていて、さっきの「覚悟」って言葉は“約束”に近いんだろうなと思ってお聞きしていました。“信頼”の部分はどうですか?おそらく周りの変化だと思うのですが。
岸本:ホームページをつくったことで、仕事の内容を理解してもらえるようになったんじゃないかな。それまではSNS発信だったんですよ。ホームページを見ていただくと、初対面の方からもどんな仕事をしてるかわかってもらえて、信頼に繋がってると思います。
佐藤:なるほど。では、デザインを通して伝えたい着物教室やキシモトヒロカジムショのイメージって、言葉にするとどんな感じになりますか?
岸本:楽しい、美しい、わくわくする。やっぱり豊かさとか幸せ感。そういう感じが伝わればいいかな。
佐藤:またそこに繋がるんですね。デザインは、これからも着物教室やキシモトヒロカジムショに貢献していけそうですか?
岸本:うん。デザインは、ほんと感性だと思うんですよ。デザインってすごく大きい。
佐藤:「デザインが大きい」。そう言ってもらえることは、デザイナーとして嬉しいですね!
岸本:イメージがつくからね。最初はデザインが好きってところから入って、その会社にどんどん興味を持って、デザインの意味はこうだったのかってわかったり。「興味」や「関心」の入り口にまず、デザインだと思います!
以上、第1回目のToをお送りしました。取材をさせていただく中で、岸本さんの凛としていて、かつ、柔らかいお人柄に、すっかり魅了されてしまいました。お言葉や雰囲気、お家の様子から、“身の周りを整える”や“丁寧に思考する”といった生活の基本の重要性を改めて感じさせていただきました。感性を大切に、自分らしくありたいとも思えました。岸本さん、どうもありがとうございました!
岸本浩加 | 着付け師・小笠原流礼法講師 岡山市倉敷市
https://hirokakishimoto.jp
着物の念いを受け継ぐ
https://hidetosato.com/archives/2231