先日、株式会社ベネッセコーポレーション岡山本社の会社見学をさせていただきました。
ベネッセグループのような世界へと発信し続けている企業で岡山にも経営機能があるということも岡山で暮らすものとして、とても誇らしい気持ちになります。
余談ですが、今回見学で社食・カフェは、社外の人も利用できるということでランチを食べてきました。健康的な美味しい食事で、常日頃利用できる社員の方々がとても羨ましい…
これまでにもご縁あって、ベネッセグループの財団関係でデザインに関わらせていただいたこともあり、組織ごとの理念など言葉もデザインを通して体験しました。中でも取締役会長の福武總一郎氏の言葉は、鮮やかで力強く文化的な視点で語られていて、ローカルで活動する自分にとっても勇気を与えてくれています。
そんな体験もあってか、ふと電車に乗っていて「なぜ自分は岡山でデザインをしているのだろう」とモノ想いにふけってしまいました。
よく、はじめてお会いする方に「どうして岡山でデザインをしているのですか?」と尋ねられることがあります。その質問の中には「東京や大阪など都市圏を拠点にして、なぜデザインをしないのですか?」という意味が含まれていることが多いです。都心部にはナショナルクライアントはもちろん、幅広いプロジェクトが集中しています。弊所、僕自身もグローバルな仕事のご縁をいただくことを目標の一つに掲げています。
当時一緒にデザインをしていた実兄が、いまは関東で仕事の幅を拡張していることを、間近でみていることも影響しているのかもしれません。その家族のつながりもあって、関東には行くこともしばしばです。
では、なぜ僕は「岡山」で「デザイン」をしているのか。
僕は生まれも育ちも岡山で、他のマチで暮らしたことは一度もありません。岡山でのこれまでは、自分の与件も含めて、様々な状況が重なりあって現在もここで暮らしています。ですが、やはり一番は温かいヒト・モノ・コトのご縁に導かれていることが一番だと思います。その中で、おそらく僕は岡山という地域が「本拠地」になっていくという明確な意識が芽生えはじめています。
また、僕がここ岡山でデザインをしていく上で意識しなければならないキーワードは「文化」なのかなぁ、と漠然に感じました。岡山で、地域で、それぞれのデザイン文化が在ることを目指していくということです。
それは、変に肩肘を張った「岡山らしい」とかではなく、「『その人』が『そこ』で『その活動』を『重ねていく』ことで『歴史』が生み出されて『文化』が育まれていく」ということだと考えました。「本拠地」もっといえば「ふるさと」ということを意識するということなんだと思います。だから仕事をする「場所」自体は例えば、東京や大阪、北海道、ニューヨーク、ミラノでもどこでも大丈夫ではないかと仮定しています。
また、文化創造の意識ということほどビジネス基盤がしっかりしていないとできないだろうと考えています。デザインをする中で印象のインパクトを残すこと、デザインしたことで何が変わるかは、もちろん意識したいけれど、同時に「続けていく」ことがとても大切だと感じています。「マネジメント」ということを深く意識して、資本を生み出す(引き寄せる)力があることで、その活動の継続ができるのだと思います。
デザインとは別業態の一例ですが、以前テレビ東京のカンブリア宮殿で放送された「パン・アキモト」の世界各地の被災地などに「パンの缶詰」を届ける事業では、持続でき採算がとれるビジネスにまで育て上げられており、活動そのものが非常に考え抜かれたALL WINになるつくりこみをされていました。「パン」の歴史に「缶詰」という新しい価値を付与して、新たな事業の創造までされています。
「デザイン」は、経済活動の中で展開されていくことを主としており、社会と密接に関わったコミュニケーションを基本とする職能です。その中で「表現」という仕事があり、定着を目指していく過程にエネルギーを注ぎます。また「表現」が密接に関係した事業体のため、この市場経済中での動きそのものが、「文化」にも結びついてくると考えています。
例えば、広告であれば時代性を投影しますし、お土産品のパッケージは地域性が表現されます。そして、ブランディングデザインであれば価値を積み重ねて育むものですから、その時間軸から「歴史」が誕生していきます。
だからこそ、繰り返しになりますが「『その人』が『そこ』で『その活動』を『重ねていく』ことで『歴史』が生み出されて『文化』が育まれていく」のだと考えています。「文化」というと、大がかりな夢物語のようにも聞こえますが、大きなインパクトを目指すことだけではなく意識のベクトルをそこに向けて、少しずつでも上に、前に、積み重ねていければと考えています。
…と考えはじめると、勝手に責任感もわいてきます。良質な文化創造の一助になることを目指して、日々「デザイン」へと真摯に向き合っていこうと益々意識します。